筆者:別府厚生
  1938年東京生まれ。少年時代と1974年以降、奄美大島在住。
  趣味は写真撮影、ヴィデオ撮影、釣り、囲碁等。




【ルリカケス】
 
 林道や山裾を歩いていてギャーギャー、ジャージャーといったちょっと耳障りな鳴き声が聞こえたら、それはルリカケスである。でも、鳩よりは小さくヒヨドリよりは大きい、紫と赤茶色のツートンカラーの美しい姿まで目撃することができたら、その幸運を喜んでもいい。なにしろ世界中で奄美大島(隣接する加計呂麻島、請島を含む)だけに棲息する天然記念物で、野鳥愛好家ならずとも会いたい鳥のひとつであるから。声は悪いという通り相場のこの鳥の名誉のために一言つけ加えるなら、実はヒューイとかピューイといった感じの優しい声で仲間と鳴き交わすときもある。
 写真に見るように翼と尾羽の先端は白く、嘴は象牙色である。繁殖期は2〜5月で、平均3個から5個の淡青色で無斑の卵を産む。巣は古木の樹洞に枯れ枝などを集めて作るが、最近は山裾の民家の軒下に営巣する例も多く見られる。森林の減少の影響なのか、カラスや野良猫などの外敵を人目を利用して避けたいためなのかよく分からない。雛は飛翔力も不充分なまま巣立ちを迎えるので、よく地上に落下して危険にさらされる。巣立った雛を親鳥は必死に木立の中へ誘導していく。
 一時期ルリカケスの羽は婦人用帽子の飾りとして大量にヨーロッパに輸出され、そのため絶滅の危機に瀕したという。しかし1921年に天然記念物に指定され、保護されるようになった。幸い現在は確実に個体数を増やしている。


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